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雪の中で観る黒森歌舞伎

しんしんと降り積もる雪の中、じっと舞台を見つめる子どもたち。舞台の上にも化粧を施した子どもが、大人にまじって見事な演技を披露するー山形県庄内地方に伝わる黒森歌舞伎は、毎年2月15日、17日の2日間、酒田市黒森地区にある鎮守日枝神社に奉納するため、雪の降りしきる中で演じられる歌舞伎です。
観客も演じ手も村の人。ふだんは農業や会社勤めをしている村の人たちが、この日は歌舞伎役者として活躍します。広い境内が桟敷席。防寒着に身を包んだ観客は思い思いの場所に陣取り、家から御馳走をこしらえてきて、芝居鑑賞を楽しみます。
この歌舞伎は、江戸時代の中期、巡業にきた旅一座の歌舞伎を見た村人が熱狂し習い覚えて始まったといわれています。270年以上の伝統の中で、少しずつ形を変えながらも村の人たちに愛され上演されてきました。「ここには芝居の虫がいっぱいすみついていて、雪が降ると、その虫が騒ぎ出す」と村の人は笑って語ります。頭や肩に雪が降りかかり真っ白になっても気にせず、子どもたちは芝居に見入っています。村の大人が、役者に変身して真剣に演じるその姿に、子どもたちも人の奥深さを感じとっているのかもしれません。 
参考文献「黒森歌舞伎保存会資料」