星物語で地球観光ーウクライナ編
北斗七星をキーワードにした星の物語。今回はウクライナに伝わるお話です。
あるところに、女の子がおかあさんと二人っきりですんでいました。ある時、おかあさんが重い病気にかかってしまいました。村はひでりがつづき、水がありません。女の子は、小さなひしゃくを手に、水をさがしにでかけました。
七つの丘をこえると、やっと小さな泉がありました。よろこんで水をくみ、こぼさないように運んでいると、ひとつめの丘をこえたところで、つかれきったおばあさんに声をかけられました。
「のどが渇いてたまらない。その水をおくれ」
「どうぞ」
女の子は泉にもどって、また水をくんできました。二つ目の丘をこえると、こんどはぼろぼろの服をきたおじいさんがいました。
「のどが渇いて死にそうさ。その水をおくれ」
女の子が家に戻ろうとするたびに、だれかに水がほしいといわれ、また泉まで戻るのでした。ようやく七つの丘をこえると、やせた赤ん坊を抱いた女の人に水をあげてしまいました。女の子は待っているおかあさんのために、走って泉に戻り、走って帰ると石につまずいて転んでしまいました。ふしぎなことに、水は一滴もこぼれず、粗末な木のひしゃくが銅のひしゃくにかわっていました。また急いで走ると荷車にひかれそうになり転んでしまいました。すると銀のひしゃくになっています。ようやく家にたどりつくと子犬がひしゃくをひっくり返し、水がこぼれてしまいました。すると、ひしゃくは金にかわり、水がこんこんと、泉のようにあふれています。おかあさんは水を飲んですっかりよくなりました。
神さまは、女の子のやさしい心をみんなが忘れないようにと、ひゃしゃくを星にして天にちりばめました。星が七つあるのは、女の子が七人に水をあげたから。よく見れば、柄のはしから二つ目の星には、小さな子犬の星もくっついているんですよ。
※マンモス11号掲載「北斗七星伝説」文:寮美千子 画:小林敏也(p.52-63)より抜粋