唄と語りでふれるアイヌの自然観|八谷まゆんきき(歌手)インタビュー
両親ともにアイヌで、母方の実家がアイヌ記念館を経営していたので、小さなころから踊りにいったり行事に出たりしてアイヌ文化にふれる機会は多かった。でも、意識的にアイヌ語と語りを学んで、人前で話すようになったのは6年くらい前からです。
アイヌの語りは、まず3つに分けられます。節がなく語り口調で散文を語るtuytak(トゥイタク)と、節にのせて叙事詩を語るoyna(オイナ)、そして英雄叙事詩や冒険譚を語るyukar(ユカラ)です。オイナの語りは、お話と節に分かれていて、それが交互に繰り返されていきます。間に入る繰り返しの節は「サケヘ」というのですが、鳥の話だったら鳥の鳴き声を真似るようなサケヘなど、動植物や自然からの言葉が入ってきます。
アイヌの物語では森羅万象に命があって、人間が大事だと思うものはすべて神様という扱いをします。それは、動植物以外のお鍋や携帯にもすべて命が宿っているという考えかたで、そのすべてが自分の行動を見ているから、誰から見られても恥ずかしくない行動をしなさいという。楽しく唄うように語るなかに、神と自然と人間の関係についての教えがあります。
唄と語りのあいだのようなアイヌのオイナは耳に心地いいものが多いので、最初は音から入って、興味をもたれた方はぜひアイヌ語の意味も知っていただけたら嬉しいです。そして、アイヌの自然な世界観にふれてもらえたらと思います。
八谷まゆんきき はちや・まゆんきき
北海道旭川出身。北海道各地域に残るアイヌの伝承歌(ウポポ)や踊り(リムセ)を披露する、女性4名によるユニット「MAREWREW/マレウレウ」のメンバー。国内外のフェスやライブに出演し、高い評価を得ている。
この記事は『mammoth』No.23(ストーリーテラー特集)に掲載されています。