不思議にみちた深海の生きもの
深海とは、多くの場合水深200mよりも深い領域をさします。地球上の海の深さの平均は約3,800mというから、海のほとんどが 深海といっても過言ではありません。その海のなかでももっとも深いとされている場所は、太平洋にあるマリアナ海溝 のチャレンジャー海淵。なんと水深10,900m以上もあります。
太陽の光が届かない深海は、植物も育たず、暗く、冷たい水の世界。深海の生きものたちは、お世辞にもかわいいとはいえない容姿で、それぞれ工夫 をこらし、懸命に生きています。ゼラチン質で体を覆ったオニアンコウ、敵に見つからぬよう目内臓以外は透明になったトウガタイカ、視力よりも嗅覚、触覚を進化させ、目を退化させたソコオクメウオやメクラウナギ。グロテスクな生きものに出会う一方で、テマリクラゲといったこの世のものとは思えないほど美しい光を発する生きものも存在します。 深海という不思議にみちた海底の世界。ここで暮らす生きものたちは、私たち人間に海の神秘を伝えているようです。
『深海のフシギな生きもの 水深11000メートルまでの美しき魔物たち』(幻冬舍) 監修:藤倉克則、ドゥーグル・リンズィー
(JAMSTEC / 海洋研究開発機構) 構成・文:ネイチャー・プロ編集室
この記事は、『mammoth』24号「Our Ocean 命をつなぐ ひとつの海」に掲載されています。