効率を求めず時間をかけてからだとつきあう|「野口体操の会」主宰・羽鳥操

野口体操創始者である野口三千三の指導を受け、現在「野口体操の会」を主宰する羽鳥操さん。『mammoth』DANCE特集では、羽鳥さんのインタビューを掲載しています。
– 小学校のときから体操が大嫌いで、いつも逃げていました。音大卒業後、ピアノのリサイタル前にあまりに緊張するからと、ピアノの先生に勧められて行ったのが野口体操でした。
いちばん驚いたのはその動き。クネクネ、ユラユラ、ニョロニョロした揺れは、からだの内側全部を見せられたような衝撃でした。洋の東西を問わず、体操で「ゆする」動きがあるのは少ないですからね。それでもこうした動かしかたによって、50歳で自分のからだが柔らかい地点に到達していたらずいぶん違うんじゃないかという直感があり、リサイタルを終えた後、2年間のつもりで飛びこみました。それがいつの間にか20年になり、40年になってしまったのですが(笑)。
大切なのは余分な力を使わないこと。動きによっては力が必要なものもありますが、そのなかでどれだけ力を抜くか。ちょっと力を抜いてみたらこんなに気持ちいいじゃないか、その感覚を大切にします。力を抜くということはとても難しいし、意識すると逆に力が入ってしまうけれども、感覚とからだが一体化するということが大事なのです。
野口体操創始者である野口三千三先生によく言われたのは「ピアノの演奏と体操を早く結びつけないこと」。からだのことって時間がかかります。効率を求めず、時間をかけることに意義がある。大切なのは、自分のからだで感じること、「これが良い」という感覚を掴むこと、何かに依存せず自分自身で考えること。そういう意味で、野口体操は芸術に近いのかもしれません。-
羽鳥操(はとり・みさお)
「野口体操の会」主宰。立教大学、明治大学非常勤講師。国立音楽大学ピアノ科卒業後、1975年より野口三千三の指導を受け研鑽を積み、助手を務めた。著書に『野口体操マッサージから始める』(ちくま文庫)など多数。http://www.noguchi-taisou.jp/
» mammoth no.29 DANCE Issue