子どもが安心して眠りにつけるように|子守唄研究者・會本希世子
子守唄の内容は時代や地域によってさまざまなんですけれど、共通点も見られるのは、富山の薬売りが全国に広めたんだろうといわれています。江戸の流行りものなんかはきっと、地方でも喜ばれたでしょうからね。
トルコの子守唄には「インシャラー、マーシャラー」という言葉がくりかえし出てきます。「インシャラー」は神さまに未来をお祈りし、「マーシャラー」はこれまで受けてきた恩恵を神さまに感謝する言葉なんだそう。それで気がついたのは、子守唄はたんに眠らせる手段ではなく、祈りをこめたものだということ。民話の専門家から聞いたのは、歌いながら子どもの体をポンポンと叩くでしょ? あれは、眠っている間にその子に邪気が入らないようにしているんだそうです。私も自分の子を寝かしつけるときに無意識にそうしていましたが、なるほどと思いました。
電車のガタンゴトンも然り、リズムって眠りを誘いますよね。リズムと守ってくれる人の肉声とで、子どもは安心して眠りにつけるんだと思います。大人のそばで安眠できることは、その子の成長に影響すると思います。少なくともその子への愛情はきちんと伝わっているんじゃないかしら。だって、自分がイライラしているときにやさしく歌うなんてできませんものね。平常心で愛情をもっていることと、子守唄を歌ってやることは無関係ではないと思います。童謡でも流行歌でもなんでもいいから、子どもには愛情をもった大人がやさしく歌ってあげたいですね。
會本希世子 えもと・きよこ
子守唄研究室主宰。地域女性史研究者。社会教育専門職をとおして現代の子育ての実情を知り、育児に関する歴史を調査中、子守唄にたどりつく。日本全国の子守唄を収集し、その背景の分析とジェンダー研究をおこなう。
※ mammoth No.31 SLEEP Issue 収録