1,300年前からのメッセージ|奈丘(語り部)
建皇子(たけるのみこ)をご存知ですか? 彼は約1,300年前、飛鳥時代に実在したといわれる、ひとりの男の子。天智天皇の長男で、持統天皇の弟。生まれつき言葉を話せず、8歳で天命をまっとうしました。祖母の斉明天皇からはとてもかわいがられ、死後は合葬するようにとの命があったといわれています。
私が建皇子に興味をもったのは、叔母の店のすぐ裏に、建皇子の殯である保久良塚古墳があり、叔母の手を合わせる姿に感動したことがはじまりです。そのときに「たけちゃんってどんな子やったんやろね」と叔母たちと想像をふくらませてたんです。
天智天皇の時代は、日本の大きな転換期で、動乱のとき。そんな時代、口が利けなかったたけちゃんはどういう思いでこの国を見て、なにを感じ、8年間を過ごしたんだろう。そのたけちゃんの思いを感じてみたいと思いました。そんなことを1,300年の時を経ていまも存在する古墳の前で、自然の声に耳を澄ませ、風のように一気に書きあげたのが「風の子、たけちゃん」という物語です。このお話を書きあげて、叔母のお店で語ることに。それが、人生初めての語りでした。
このお話には目に見えない大切なこと、家族のこと…さまざまな要素が含まれていて、語るごとに新しい発見があります。1,300年前に生きたたけちゃんが、私に語ることのおもしろさを教えてくれました。そんな不思議な出会いを大切に、これからのご縁を大切に、今後も語りを続けていけたら幸せです。
奈丘 なおか
大阪府出身。2010年、秋奈良県吉野、保久塚古墳にて建皇子祭を開催し、笛奏者雲龍氏とともに初めての語りをおこなう。目に見えなくても確かにある大切なことを探し、この地球の美しさを物語に描いている。http://joyhouse.air-nifty.com
この記事は『mammoth』No.23(ストーリーテラー特集)に掲載されています。