宇宙はさらに広く身近な存在に|阪本成一(JAXA 宇宙科学研究所教授)
宇宙とひと言でいってもいろいろあります。宇宙観測、宇宙移住、宇宙旅行にわけて未来の話をしましょう。
まずは、宇宙観測について。宇宙から届くメッセージをすべて受け取って詳しく解析できれば、宇宙の成り立ちがわかるかもしれない。でも、それを受け止めるための望遠鏡の性能にはまだ限りがあります。
観測技術が発達することによって、どんどん宇宙の姿は明らかになっていくでしょう。100年後なら、まだ検出されていない重力波で宇宙を観測できるかもしれない。それは宇宙のはじまりを探る手がかりになると言われています。同時に新たな謎も生まれるでしょう。
次に宇宙移住。月や火星に探査のための基地はできるでしょう。でも、地球環境がアブナイからほかの星に逃げようと考えるのはナンセンス。もともと生命のいない星を住める星に変えられるなら、この星を守り続ける方が簡単だから。ほかの星よりは地底や海のなかの方がはるかに快適です。
しかし、みなさんが宇宙に行ける日は、そう遠くはありません。宇宙大航海時代はすでにはじまっています。月を周って地球に帰ってきたら人生観が変わるでしょうね。また、宇宙を知ると、私たちが生まれた地球がすごく奇跡的、多くの偶然によって選ばれた星だということがわかるでしょう。
調べれば調べるほど、我々がいかに宇宙のことを知らないかがわかる。宇宙を知ることは、私たちが住む地球を知ること。まずは空を見上げて宇宙について考えてみませんか。
阪本成一 さかもとせいいち
1965年生まれ。理学博士(東京大学、1994年)。専門分野は電波天文学。星間分子雲の構造、運動、物理・化学状態、分布、生成・進化などが専門。宇宙科学研究に関わる広報・普及・教育・渉外活動全般に携わる。
※ マンモス 21号 「IMAGINE THE FUTURE どんな未来を想像する?」(2011年9月発行) インタビューより
Text: Keiko Kamijo