カレンダーは文化そのもの |mammoth 暦特集インタビュー・中牧弘允さん
「暦」をテーマにしたmammoth “暦”特集のショートインタビュー。第5回は、国立民族学博物館名誉教授、吹田市立博物館館長の中牧弘允さんにお話を伺いました。
-カレンダーは文化そのもの –
時間は、文化的にいかようにも区切ることができます。太陽暦、太陰暦、自然暦など、世界中に主な暦は15ほどありますが、暦はそもそも社会生活を律するために作成されました。それには長い歴史と深いわけがあって、それは文化なんですね。だから、カレンダーはたんに日付を知るためのものではなく、そこにはさまざまな背景や歴史が凝縮されているわけです。カレンダーを媒介としてさまざまな文化を研究することを、私は勝手に「考暦学」と称しています。「高学歴」じゃないかって揶揄されることもあるんですが(笑)。
女優さんや富士山、キャラクターの写真や絵が入ったカレンダーから、スポーツ、映画、アニメといった大衆文化をうかがい知ることができます。そこに宣伝や広告も入ってきて、企業や政治の要素が加わることもあります。また、たとえばインドネシアのバリでは、西暦、ジャワ暦、ヒンドゥーのシャカ暦、イスラムのヒジュラ暦、中国の太陰太陽暦、仏暦などが盛りこまれた、非常に複雑なカレンダーが使われています。家を建てるならこの日がいいとか、外出してはいけない日とか、いろんな情報がつまっていて、宗教や民族の文化が色濃く反映されています。
これらの例から、1枚のカレンダーから文化をひもとくことができるということがおわかりになると思います。カレンダーは、文化を解く鍵なのです。世界中のカレンダーを眺めているだけで、異文化にふれることができるのです。
中牧弘允 なかまき・ひろちか
1947年、長野県生まれ。東京大学大学院博士課程修了。文学博士。日本カレンダー暦文化振興協会理事長。著書に『カレンダーから世界を見る』、『会社のカミ・ホトケ-経営と宗教の人類学』など多数。
mammoth No.27「CALENDAR」(2013年9月15日発行)収録